MBD一言だけ言わせて下さい!

元MBDエンジニアが経験を基に企業が本当にMBDを導入するために何が必要なのか徒然ぼやいているブログです。

3本目_MBD導入失敗事例①

いきなりですが、私が携わった過去のプロジェクトで起こったMBDの導入失敗事例に関してお伝えします。

“え、いきなり失敗事例!?”っと、思いかもしれませんが、失敗から学べることは多々あります。むしろ成功したものを説明するとそちらが一人歩きしてしまう可能性があり、魔法のような技術だと勘違いされるのを避けるためあえて失敗事例をお伝えしたいと思います。

そして、その失敗から何をすれば成功に導けたのかを次の記事で説明したいと思います。(今回の記事より、何が駄目だったのかを考察していただくことも狙いとしてあります。)

 

私がMBD導入を知り始めた20XX年、某自動車会社で1Dシミュレーションを使った車両全系モデルを作成して欲しいというプロジェクトを受注いただき、当初の自分はとにかく現存データでモデルを作成することに集中しました。なお、初めに再現したかった現象は車両のある加速性能となります。

そこで作成したモデルは以下となります。

①エンジンモデル

 →筒内の燃焼を加味した詳細物理モデル(燃焼の広がりを検討しながらピストンへの圧力を計算し、トルクを算出)

 →マップモデル(ある入力値、例えば噴射量をエネルギー換算し、そこからの内部損失を加味して最終的にトルクにするためマップを使い計算)

②車両全系モデル

 →上記のエンジンに繋ぐためのトランスミッション(ギア変速の条件によって可変する値を損失エネルギーに掛け合わせたもの)、タイヤ(摩擦係数一定の簡易摩擦モデル)、車両(車体を一つの剛体とみなしたもの)、制御(ドライバーアクセル踏み込み量から各指示値をマップで算出)、ドライバー(目標車両速度、実車両速度の乖離からアクセル踏み込み量をマップで算出)を繋げたモデル

 

上記のモデルを検証(Validation)し、現象としては再現性のあるモデルを作成できたと意気揚々と成果物として提出しました。

…っが、結果としてこのモデルは開発に使われることなく終わってしまいました

 

さて、このプロセスの中で何が考慮不足だったでしょうか?